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 チクチクと背中に刺さる視線にサンジは溜め息を零して振り返った。
 途端にパッと逸らされる目線。やれやれ、いったい何がしたいのだと問いかけても別にとそっけない返事が返ってくるだけで、無言で酒瓶を咥えるゾロから理由は聞けそうになかった。
「よし!終了!」
 最後の皿を拭きあげて、棚にしまってクルリ振り返る。
「あっ・・。」
 バチッと派手な音がしそうなほど視線が絡み、慌てたようにゾロが顔を伏せる。その顔が一瞬だけだが、赤く染まっていた気がして、サンジはおやっと首を傾げた。
 好きだ愛してるお前だけだ、・・と、アピールを始めて一週間。始めは鼻で笑っていたゾロも、最近では溜め息を着くだけで、こちらを無視するようなことはなくなってきていた。告白当初はからかっていると思われていた様で、警戒もされなかったのだが、最近はほんの少し意識しているのか、サンジが傍にくると決まって少し身体を強張らせるのだ。
「えーっと、ゾロ?」
 ゆっくりと出来るだけ怯えさせないように近付いて、サンジはゾロに近付く一歩手前で足を止めた。
「・・・なんだ?」
 ぶっきらぼうに、視線をテーブルへと落としたまま聞いてくるゾロにうわあ~と心の中で感動しながら、これだけ反応をしてくれるというのは、たぶん、ゾロの気持ちが自分に向いてきているのだろうと、にやけそうになる口元を引き締める。
「まだ、飲むか?」
 いつもより進んでいないようだったが、それでもゾロが手にしている酒瓶の中の残りなど大して残ってはいないだろう。特別いい酒を用意したわけではないが、今夜は特にその味なんて分からなかったんじゃないだろうかと触れればきっと熱いだろう肌の色に目を細める。
「・・い・・・いや、いい。」
 ゾロにしては歯切れの悪い答えを返し、視線をテーブルに這わせた後、何を思ったのかサンジへと向けられた綺麗な翡翠にサンジは小さく喉を鳴らした。
 本当にまっすぐな瞳なのだ。一瞬でも逸らせば二度と見ることの出来ない輝きをその瞳に見つけて、サンジはいつだってその翡翠から視線を逸らせなくなる。意志の強い、その眼差しに絡めとられるのは凄まじい優越感もある。
「・・・あ・・・あの・・な?」
「んっ?」
 その強い瞳がかすかに揺らいで、サンジの顔を見つめてパクパクとその唇が意味も無く動く。思わず小さな子供にするように笑いかけて、促し、少々失礼だったかと思ったのだが、ゾロは気にしたふうも無くしばらく考え込んでいるようだった。
「あのな・・・。」
「ああ・・・何?」
 やっと決心がついたのかジッと注がれる視線にサンジは柔らかな笑みをゾロへと向けた。
「男同士って気持ちいいのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ?」
 笑みの形に唇を吊り上げたまま、サンジはゾロの言った言葉を頭の中でゆっくりと繰り返す。
「はあああああ?!」
 間抜けな応えの後、数分の間をおいて雄叫びを上げた自分を誰が責めようかとサンジは目の前で眉間に皺を寄せたゾロをマジマジと見下ろした。
「テメェに好きだって言われて、最初はからかってやがんのかこのグルマユって思ってたんだが。」
「・・・・・・・。」
「テメェの態度を見てるとどうもマジなんじゃねえかって思いはじめて・・。」
「いや、俺はマジでゾロの事好き、なんだけど。」
「ああ、そう思って・・・、で、・・・も、もし、俺もテメェのことが好きだってことになったら、つ、付き合うとか。」
「す、好きだって言ってくれんの?ゾロ?」
「や、もしも、もしもの話だ!」
 ゾロのテンションにつられて同じようにテンションの上がったサンジがもう一歩ゾロとの距離を縮めようとして、その手に進行を止められる。
 顔を赤くしてもしもを繰り返すゾロに脈がないわけないだろうとサンジは鼻息荒く、足を進め、強引にゾロの座っている横へと割り込むようにして腰を下ろす。
「わ、ばか、待て、テメェ何しやがる!」
「なにって、ハグ?」
 ゾロの抵抗などなのその、よしとばかりに妙なハイテンションでサンジは勢いのままにゾロの腰に腕を回し距離を詰める。その間に腕を突っ張り、これ以上は近寄らせないとばかりに睨み付けるようなゾロにサンジはゴクリと唾を飲み込んだ。本気で怒っているわけではないゾロは可愛くてエロイだけで、それだけでサンジのあらぬ器官が暴走しそうな気分を味わう。
「だから、話を聞け!」
 パシリと胸を一つ叩かれて、キラリと光った瞳に折れてサンジは腰を抱き寄せようとしていた腕の力を抜く。すると安心したのか二人の間に突っ張らせていたゾロの腕からも力が抜けていく。
「で・・・・・、俺がテメェを好きだったら付き合うようになるだろう?」
「あー、うん、まあそうだな。」
「そうしたら、キスだけでいい・・って、事にはならねえよな?」
「もちろん!!」
 小さな伺うようなゾロの声にきっぱりと大声で返したサンジはジロリと間近で睨まれる。
「言っとくが俺は男とそういうことをしたことはねえ。」
「俺だってそうだ。」
 これも間髪いれず答えて、サンジはゾロを見つめ返す。
「だから、聞いたんだ・・・・。」
「・・・え?」
「ロビンにどうやってやんのかって。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「男同士のセッ。」
「わああああ!!!」
 奇妙な叫び声をあげて咄嗟にゾロの腰から放した腕でその口を塞ぐ。ゼエハアと深呼吸を繰り返して、サンジは恐る恐るといったふうにこちらに向けられている瞳を覗き込んだ。
「誰に何を聞いたって?」
 パチパチと二度ほど瞬きしたゾロの眉が寄り、軽く頭を動かすことで口に当てていた手は外される。
「だから、ロビンに男同士ってどうやるのかって聞いた。アイツが一番物知りだからな。」
 ドーンといっそ見事なぐらいの男らしさで胸を張り答えてきたゾロにサンジはへなへなと椅子に崩れるようにしてテーブルに懐く。
 別にゾロとの事を隠すつもりはなかったのだが、すっかり相手にバレているというのは落ち着かない。
「そ、それで?」
「ああ、教えてくれた。絵入りの図解で。」
 徐々に赤く染まっていくゾロの顔を見ながら、それはきっとエではじまる本だったのだろうと心の中で溜め息をつく。
「それで・・・・分かったんだな?」
「ああ、分かった。・・・・・・・・・一応。」
 きっとロビンのことだ、絵を見せながら懇切丁寧に先生と生徒の如く、ゾロに男同士のあれこれを説明したのだろう。容易にその姿が頭に浮かんでサンジはハハハと力ない笑いを漏らす。
「ただ、いろいろ考えて見てたんだが・・・。」
「・・・ただ?」
「あんなことをテメェに出来・・。」
「ゾロ!!」
 がっしりとゾロの両肩を掴んで、サンジは真剣な眼差しでその顔を覗きこんだ。
「身体を重ねるだけが恋人じゃねえ!気持ちのほうが大切なんだ!」
 パチパチとサンジの剣幕に瞬きをするゾロにサンジはギュウッと肩に置く手に力をこめる。
「俺のことを好きになってくれればいい!後のことはまた後で考えよう!」
「あ・・・ああ。」
 サンジは内心冷たい汗を掻きながらゾロに話しかけた。此処で失敗してあれこれをゾロにする予定が自分がされてしまってははっきりいって困る。
「とりあえず、ゾロ、好きだ!」
「・・・ああ。」
 コクコクと目を丸くしたまま頷いたゾロにダラダラと嫌な汗を掻きながらサンジはにっこりと笑ってみせたのだった。

















「で、どうだったの?剣士さん。」
 みかんの木陰でのんびりと惰眠を貪っていたゾロの横で笑いを含んだ声がする。それにうっすらと目を開けるとゾロの寝転んでいる真下で海を眺めている黒髪にふわわあと大きな欠伸を零した。
「ああ、テメェの言った通りだったな。確かにアイツ、ぜんぜん手ぇ出してこねえ。」
「ふふっ、言ったとおりだったでしょ?」
 クスクスと楽しげに笑うロビンに共犯者の笑みを向けてゴロリとゾロは空に向かって大きく息を吐き出した。
「こっちだってかなり待ったんだ。もうしばらくアイツに我慢してもらっても悪くはねえだろう。」
「そうね。それがいいと私も思うわ。」
 ふわりと咲いたハナがゾロの髪を優しく優しく撫でていく。
 サンジが自覚するよりもっと前にゾロは自分の気持ちを自覚して、気付かないうちにサンジの態度に傷付いては、こうしてロビンの手に慰められてきた。苦しい恋だと諦めていたゾロを優しく見守ってくれていたロビンのことはサンジとは別の意味で好きなのだ。
『両思いだって分かったらきっとコックさんは止まらないわよ?』
 そう言ってロビンは告白されたと報告したゾロに悪戯っぽく笑った。
『少しだけでも、コックさんに悩んでもらいましょう。フフッ、きっとその方が剣士さんにとってもいい結果になると思うから。』
 それも面白そうだと、その提案に乗ってロビンに片棒を担いでもらったおかげで、なんだかサンジのゾロに対する扱いがとても向上している。つまりは女性陣とはまた違った意味で甘やかしてくるのだ。
「それで、どこまで・・・って聞いてもいいのかしら?」
 ふわふわと風に揺れるゾロの髪を撫でながらロビンは楽しげに問いかけてくる。それにクスリと笑ってゾロは髪を撫でる手に己の手を重ねた。
「手を握る・・・ぐらいだな。」
 ゾロが自分を好きかも知れないといった瞬間に押し倒そうとした男が、今ではそっと指を絡めてくるぐらいしか接触しようとはしない。本当は抱きしめてキスの一つもしたいようだが、ゾロがジッとサンジの顔を見つめると困ったように視線を逸らして重ねた手も解いてしまうのだ。
「残念そうね・・・。」
「んっー?そうでもねえ。」
 抱き合わなくても手が触れるだけで嬉しいと感じるのが楽しいのだ。
 それに手が触れた瞬間にふわりと微笑まれるあの顔がとても嬉しい。キスして、抱き合って、そんなことが当たり前になってしまったらきっとこの感動も薄れてしまうのだろう。それが勿体無いと思ってしまうのだ。
「・・・・まあ・・・・もうちょっとだけ・・な。」
 クスクスとゾロの言葉にやはり小さく笑って髪を撫で始めた柔らかい手にゾロはゆっくりと目を閉じて、眠りについたのだった。




~END~

------------------
ロビンちゃんと仲良しのゾロって好きです。
姉弟みたいな関係でw
 

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