更新案内&管理人の日常光景です
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あ、雨だとポツンと頬に受けた水滴にサンジは空を見上げた。
先程までカラッと晴れていた青空にいつのまにやら厚い雲が顔を出し、薄く灰色に色づくそれは太陽の光を遮っている。 「うわっ!!」 ポツン。 頬に触れた一滴に馬鹿みたいな間抜け面を空へと向けていたサンジの頬にポツポツと大きな粒があたり始め、あっという間にそれは痛みを伴うほどの大きさで降り注ぐ。 バシバシと叩くように空から降り注ぐ雨粒は大きく、短時間それに晒されただけだったサンジの服はすでにぐっしょりと水分を吸って色を変えてしまった。 「あーあー。」 胸ポケットの煙草は箱ごと濡れてしまい、ふにゃりとした手触りをサンジの指先に伝えてくる。 長い航海、それほど多く買っているわけではない貴重な嗜好品。それを無駄にしたことよりも、滝のように降り注ぐ雨のせいで白く煙る世界にサンジははあっと溜め息を零した。 「しまったなあ。」 「何がだ。」 はあっと吐き出した息に混じって零した言葉に背後から訝しげな声がかかる。 それにサンジは軽く肩を竦めると手にしていた煙草の箱をぶらぶらと左右に振ってみせた。 「一つ、おしゃかだ。」 いかにも残念だと未練たらしく言ってみせたサンジに緑の瞳が丸く開かれる。 「まあ、いいじゃねえか。たまには我慢しろってことだ。」 丸くなった瞳が今度は可笑しげに細められ、その唇が悪戯っぽく歪められる。 むわりと身体にまとわりつく湿度は外の雨だけのものだとは思えなかった。 「他人事だと思いやがって・・・。」 鍛錬を終え、汗を流していたのかかすかに石鹸の香りを纏った剣士はサンジの言葉に軽く肩を竦める仕草をしてみせる。ほんのりと色づく肌の色と、熱く湿った香りにサンジは殊更顔を顰めてみせて、細く扉を開いて激しい雨音に溜め息を零す。 「おい・・・。」 薄く開いた扉の隙間、白く煙る世界に目を向けていたサンジの背後から日に焼けた腕が伸びて開いた扉を押さえる。 「足元濡れてるぞ。」 サンジの手首を無造作に掴んだ熱い手のひらと、耳元で呟かれた言葉に濡れたシャツの中で身体の熱が上がるのを感じる。 急に降ってきた雨を避けて、咄嗟に選んだ場所にゾロが居たのは誤算だった。 バシャバシャと派手な音を立てている雨音に遮られて小さな声は互いに届かない。 「どうせ濡れてんだ。そのまま風呂入ってこいよ。」 キィと小さな軋みを残して閉じられた扉にサンジはしまったなあと心の中で呟いた。 「・・・・・お前のあとで?」 「はあ?俺は上がったからもう入んねぇよ。」 扉を眺めながら、溜め息混じりに問いかけたサンジに不思議そうなゾロの声が答えてくる。それにサンジは苦笑を浮かべながら、そっと先程ゾロに掴まれた右手首を左手の中指でそっとなぞった。 熱い熱い、ゾロの手の感触がしっとりと濡れたシャツの上から押し当てられ、その熱にクラクラしそうだ。 「ほら、早く入って来いよ。」 ぐいっと乱暴に来ていたシャツを剥かれ、サンジは本当にしまったなあと心の中で頭を抱えた。 大好きな相手と密室に2人きり。 相手はけっして自分のことを意識しているわけではないが。 「ゲッ、冷めてぇ!・・・とっとと風呂入っ。」 遠慮なくサンジの上半身からシャツを剥ぎ取ったゾロが何気なく触れた腕の冷たさに驚いて声を上げたのを合図に、サンジは雨で冷えたその腕をゾロへと伸ばした。 まあるく大きく見開かれた翡翠の瞳を間近で覗き込んで、自分とは違い熱い肌に手のひらを当てる。 「バッ、てめぇ、なにやって。」 「・・・シッ。・・・・・・黙って・・。」 驚き、逃げようとした身体を引き寄せながらサンジは誘うようにもう一度薄く開かれた唇を奪う。 外は激しい雨。 多少の物音は掻き消されて誰の耳にも届かない。 サンジの行動についていけなかったゾロの思考の混乱の隙をついて、その身体をゆっくりと己の身体と沿わせながらサンジは小さく笑った。 大好きな人と密室でふたりきり。 風呂上りのゾロと咄嗟に駆け込んだこの部屋で顔を合わせた時は確かにしまったとサンジは思ったのだが、これはこれでチャンスなのかもしれないと、混乱している相手を見下ろして目を細める。 雨が止むまでのほんのわずかな時間。 一時しのぎだとしても、ゾロを抱きしめる機会が訪れたことにサンジは小さく笑って抱きしめる腕の力を強めたのだった。 END++ PR |
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