更新案内&管理人の日常光景です
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 我輩の名はニャンジ・・あっ、違った。
えーえー、ゴホン。
我輩の名はサンジ。
ニャンとこの世に生まれて十九年。
尻尾の先は一つだが、これでもれっきとした、由緒ただしい化け猫一族の末裔だ。
「おおーい、グルマユ~。」
ガラガラと大きな音を立ててアルミの大きな窓が引き開けられて、そこから一人の男が顔を出した。
「おーい、飯だぞー、グルマユー。」
だーかーら!!俺の名前はグルマユじゃねえって何度言ったら分かるんだ!!
窓を開け、通りに向かってグルマユグルマユと連呼している緑の髪の男の名はゾロ。半年程前から俺の飼い主という立場になった男だ。
「グルマユ~。」
ニャンと生まれて十九年。俺には生まれたときからサンジとう名前がある。ゾロの前の飼い主であった彼女も、そのまた前の飼い主の彼女も、俺のことはきちんとサンジと呼んでいた。それなのに・・・・。
「チッ、こんだけ呼んでも帰ってこねえって事はいねぇのか、グルマユの奴。」
だ・か・ら!!!
俺の名前はグルマユじゃねえって言ってんだろうがぁ!!思わずゾロの言葉に反応し、シャアっと背中の毛を逆立てて怒鳴りかけ、俺は今の自分お置かれている状況にハッと身を固くする。
「あ・・・またね。・・・サンジ・・くん。」
「・・・・あっ・・。」
ぎこちない笑みを向けて魅力的なグレーの縞模様の彼女が駆けるようにして、立ち去っていく。あああ・・・、最近知り合ったレディの中でも一番若くて美人な彼女はこの辺り一帯の雄猫達のアイドルだ。飼い猫の彼女は滅多に外に出てこないし、他の雄猫を出し抜いて2人っきりで会う機会なんてそうはない。何度か話しかけて、やっと月夜のデートの約束を取り付けたのに・・・。
俺はキッと開いた窓を睨み付け、その窓際まで伸びている大木を一気に駆け上がり、その隙間から部屋の中へと飛び込んだ。
「あ?居たのか・・。」
チリンと最近首に着けられた鈴が鳴って、その音に気付いたゾロがのんきな声を出して振り返る。
ウルサイ、テメェのせいでふられたじゃねえか!と怒鳴りたいのをグッと堪えて蒼い瞳で睨むだけに留める。第一に俺はまだ、人間の言葉が喋れねえ。 「そっちにあるぞ。」 どうやらゾロも夕食らしく、動かしていたその手を止めて俺に話しかけ、そしてまた箸を動かす。それにプイッと顔を背けて、いつも食事が用意されている台所の片隅へと向かって俺は歩いていった。 ツンツンと尻尾を揺らしながら歩いていった俺にどうやらゾロが小さく笑ったらしかったが、それに反応を返すのも腹立たしく、俺は気付かないふりで用意されていた餌鉢へと向かった。
普段構う素振りは一切見せないくせに、たまにだが、分かってやっているんじゃねえかと思うぐらいいいタイミングでゾロは俺の交流の邪魔をしてくれることがある。もっともただの猫として振舞っている俺の邪魔をゾロがしているとは思えない。ゾロは俺がそこらの猫たちと違うとは露ほども疑っていないはずだ。 ああー、何だよコレ。俺は小さな器に盛られたそれを見て小さく肩を落した。
何度言っても、この飼い主は俺の好みを覚えやしねえのはよしとしよう。しかし、今夜の飯に限っては文句を言ってもいいんじゃないだろうかと俺は疲れたようにそれを見つめた。 たぶん俺用の餌を切らしたのだろう。鮭おにぎりを半分に割って軽く解したものが可愛らしい猫の絵柄のプリントされたその小皿に入っていた。 いや、まあ、俺は普通の猫じゃねえし?別に食事にこだわるつもりもないよ? ただ、普通の猫に人間の食い物ってのは塩分が多くて、身体に悪いってコイツは分かってねえんだろうかと溜め息混じりにゾロのほうを振り返る。 食事が終わったのか見るともなしにテレビ番組のチャンネルを変えているゾロの目の前、ガラスで出来たローテブルの上には空になったと思われるコンビニ弁当が2つ。ゾロもこだわりがないというか、食べれればなんでもいいと思っているのか、皿に乗った料理を食べている姿など数えるぐらいしか見たことがない。 はあっと溜め息をついて俺は諦めてシャケおにぎりに噛り付いた。 おにぎりは美味かったけれど、俺は意思の疎通の図れない飼い主と、化け猫という立場を隠して飼い猫を装っている現状に深くふか~く、溜め息をついたのだった。 <おわり> PR |
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