更新案内&管理人の日常光景です
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 ハラハラと風に乗って降りかかった薄いピンクや黄色の花びらにナミは頭上を振り仰いだ。 PR 困ったと目の前の相手の主張にサンジは天を仰いだ。
あ、雨だとポツンと頬に受けた水滴にサンジは空を見上げた。
先程までカラッと晴れていた青空にいつのまにやら厚い雲が顔を出し、薄く灰色に色づくそれは太陽の光を遮っている。 「うわっ!!」 ポツン。 頬に触れた一滴に馬鹿みたいな間抜け面を空へと向けていたサンジの頬にポツポツと大きな粒があたり始め、あっという間にそれは痛みを伴うほどの大きさで降り注ぐ。 バシバシと叩くように空から降り注ぐ雨粒は大きく、短時間それに晒されただけだったサンジの服はすでにぐっしょりと水分を吸って色を変えてしまった。 「あーあー。」 胸ポケットの煙草は箱ごと濡れてしまい、ふにゃりとした手触りをサンジの指先に伝えてくる。 長い航海、それほど多く買っているわけではない貴重な嗜好品。それを無駄にしたことよりも、滝のように降り注ぐ雨のせいで白く煙る世界にサンジははあっと溜め息を零した。 「しまったなあ。」 「何がだ。」 はあっと吐き出した息に混じって零した言葉に背後から訝しげな声がかかる。 それにサンジは軽く肩を竦めると手にしていた煙草の箱をぶらぶらと左右に振ってみせた。 「一つ、おしゃかだ。」 いかにも残念だと未練たらしく言ってみせたサンジに緑の瞳が丸く開かれる。 「まあ、いいじゃねえか。たまには我慢しろってことだ。」 丸くなった瞳が今度は可笑しげに細められ、その唇が悪戯っぽく歪められる。 むわりと身体にまとわりつく湿度は外の雨だけのものだとは思えなかった。 「他人事だと思いやがって・・・。」 鍛錬を終え、汗を流していたのかかすかに石鹸の香りを纏った剣士はサンジの言葉に軽く肩を竦める仕草をしてみせる。ほんのりと色づく肌の色と、熱く湿った香りにサンジは殊更顔を顰めてみせて、細く扉を開いて激しい雨音に溜め息を零す。 「おい・・・。」 薄く開いた扉の隙間、白く煙る世界に目を向けていたサンジの背後から日に焼けた腕が伸びて開いた扉を押さえる。 「足元濡れてるぞ。」 サンジの手首を無造作に掴んだ熱い手のひらと、耳元で呟かれた言葉に濡れたシャツの中で身体の熱が上がるのを感じる。 急に降ってきた雨を避けて、咄嗟に選んだ場所にゾロが居たのは誤算だった。 バシャバシャと派手な音を立てている雨音に遮られて小さな声は互いに届かない。 「どうせ濡れてんだ。そのまま風呂入ってこいよ。」 キィと小さな軋みを残して閉じられた扉にサンジはしまったなあと心の中で呟いた。 「・・・・・お前のあとで?」 「はあ?俺は上がったからもう入んねぇよ。」 扉を眺めながら、溜め息混じりに問いかけたサンジに不思議そうなゾロの声が答えてくる。それにサンジは苦笑を浮かべながら、そっと先程ゾロに掴まれた右手首を左手の中指でそっとなぞった。 熱い熱い、ゾロの手の感触がしっとりと濡れたシャツの上から押し当てられ、その熱にクラクラしそうだ。 「ほら、早く入って来いよ。」 ぐいっと乱暴に来ていたシャツを剥かれ、サンジは本当にしまったなあと心の中で頭を抱えた。 大好きな相手と密室に2人きり。 相手はけっして自分のことを意識しているわけではないが。 「ゲッ、冷めてぇ!・・・とっとと風呂入っ。」 遠慮なくサンジの上半身からシャツを剥ぎ取ったゾロが何気なく触れた腕の冷たさに驚いて声を上げたのを合図に、サンジは雨で冷えたその腕をゾロへと伸ばした。 まあるく大きく見開かれた翡翠の瞳を間近で覗き込んで、自分とは違い熱い肌に手のひらを当てる。 「バッ、てめぇ、なにやって。」 「・・・シッ。・・・・・・黙って・・。」 驚き、逃げようとした身体を引き寄せながらサンジは誘うようにもう一度薄く開かれた唇を奪う。 外は激しい雨。 多少の物音は掻き消されて誰の耳にも届かない。 サンジの行動についていけなかったゾロの思考の混乱の隙をついて、その身体をゆっくりと己の身体と沿わせながらサンジは小さく笑った。 大好きな人と密室でふたりきり。 風呂上りのゾロと咄嗟に駆け込んだこの部屋で顔を合わせた時は確かにしまったとサンジは思ったのだが、これはこれでチャンスなのかもしれないと、混乱している相手を見下ろして目を細める。 雨が止むまでのほんのわずかな時間。 一時しのぎだとしても、ゾロを抱きしめる機会が訪れたことにサンジは小さく笑って抱きしめる腕の力を強めたのだった。 END++ 我輩の名はニャンジ・・あっ、違った。
えーえー、ゴホン。
我輩の名はサンジ。
ニャンとこの世に生まれて十九年。
尻尾の先は一つだが、これでもれっきとした、由緒ただしい化け猫一族の末裔だ。
「おおーい、グルマユ~。」
ガラガラと大きな音を立ててアルミの大きな窓が引き開けられて、そこから一人の男が顔を出した。
「おーい、飯だぞー、グルマユー。」
だーかーら!!俺の名前はグルマユじゃねえって何度言ったら分かるんだ!!
窓を開け、通りに向かってグルマユグルマユと連呼している緑の髪の男の名はゾロ。半年程前から俺の飼い主という立場になった男だ。
「グルマユ~。」
ニャンと生まれて十九年。俺には生まれたときからサンジとう名前がある。ゾロの前の飼い主であった彼女も、そのまた前の飼い主の彼女も、俺のことはきちんとサンジと呼んでいた。それなのに・・・・。
「チッ、こんだけ呼んでも帰ってこねえって事はいねぇのか、グルマユの奴。」
だ・か・ら!!!
俺の名前はグルマユじゃねえって言ってんだろうがぁ!!思わずゾロの言葉に反応し、シャアっと背中の毛を逆立てて怒鳴りかけ、俺は今の自分お置かれている状況にハッと身を固くする。
「あ・・・またね。・・・サンジ・・くん。」
「・・・・あっ・・。」
ぎこちない笑みを向けて魅力的なグレーの縞模様の彼女が駆けるようにして、立ち去っていく。あああ・・・、最近知り合ったレディの中でも一番若くて美人な彼女はこの辺り一帯の雄猫達のアイドルだ。飼い猫の彼女は滅多に外に出てこないし、他の雄猫を出し抜いて2人っきりで会う機会なんてそうはない。何度か話しかけて、やっと月夜のデートの約束を取り付けたのに・・・。
俺はキッと開いた窓を睨み付け、その窓際まで伸びている大木を一気に駆け上がり、その隙間から部屋の中へと飛び込んだ。
「あ?居たのか・・。」
チリンと最近首に着けられた鈴が鳴って、その音に気付いたゾロがのんきな声を出して振り返る。
ウルサイ、テメェのせいでふられたじゃねえか!と怒鳴りたいのをグッと堪えて蒼い瞳で睨むだけに留める。第一に俺はまだ、人間の言葉が喋れねえ。 「そっちにあるぞ。」 どうやらゾロも夕食らしく、動かしていたその手を止めて俺に話しかけ、そしてまた箸を動かす。それにプイッと顔を背けて、いつも食事が用意されている台所の片隅へと向かって俺は歩いていった。 ツンツンと尻尾を揺らしながら歩いていった俺にどうやらゾロが小さく笑ったらしかったが、それに反応を返すのも腹立たしく、俺は気付かないふりで用意されていた餌鉢へと向かった。
普段構う素振りは一切見せないくせに、たまにだが、分かってやっているんじゃねえかと思うぐらいいいタイミングでゾロは俺の交流の邪魔をしてくれることがある。もっともただの猫として振舞っている俺の邪魔をゾロがしているとは思えない。ゾロは俺がそこらの猫たちと違うとは露ほども疑っていないはずだ。 ああー、何だよコレ。俺は小さな器に盛られたそれを見て小さく肩を落した。
何度言っても、この飼い主は俺の好みを覚えやしねえのはよしとしよう。しかし、今夜の飯に限っては文句を言ってもいいんじゃないだろうかと俺は疲れたようにそれを見つめた。 たぶん俺用の餌を切らしたのだろう。鮭おにぎりを半分に割って軽く解したものが可愛らしい猫の絵柄のプリントされたその小皿に入っていた。 いや、まあ、俺は普通の猫じゃねえし?別に食事にこだわるつもりもないよ? ただ、普通の猫に人間の食い物ってのは塩分が多くて、身体に悪いってコイツは分かってねえんだろうかと溜め息混じりにゾロのほうを振り返る。 食事が終わったのか見るともなしにテレビ番組のチャンネルを変えているゾロの目の前、ガラスで出来たローテブルの上には空になったと思われるコンビニ弁当が2つ。ゾロもこだわりがないというか、食べれればなんでもいいと思っているのか、皿に乗った料理を食べている姿など数えるぐらいしか見たことがない。 はあっと溜め息をついて俺は諦めてシャケおにぎりに噛り付いた。 おにぎりは美味かったけれど、俺は意思の疎通の図れない飼い主と、化け猫という立場を隠して飼い猫を装っている現状に深くふか~く、溜め息をついたのだった。 <おわり> 「ないなら、いい。」
そう、そうだ。 「テメェってやつは・・。」
|
カレンダー
フリーエリア
プロフィール
HN:
千紗
性別:
非公開
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター
|